You are in rock

*いしのなかにいる*

はるのうみ

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こんだけおだやかな海はめずらしい。春といえどもめずらしい。遠く水平線と空とが境目もなく、溶けて一枚の面となって立ち上がっていくようで、じっと眺めていたら幾度も目眩におそわれた。

確固とした一枚の鏡面のようで、しかしゆったりとなみうっており、今自分がその一続きの水面の上にたっている気がする。この自分の足下が、どれだけ不確かなものであることか、ゆっくり、ゆっくり、押し寄せる波にこの自分も沈んでいくようであった。

冬の厳しい海に立ち向かう心構えを、つい忘れさせる春の海は、その静かな面影に油断していると、知らぬ間に人の魂を呑み込んでしまうらしい。気をつけねばなぁ、このゆったりした水面の下に、嫌な思いだけを沈められればいいのだけど、それって不法投棄になるだろう