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*いしのなかにいる*

ピンチランナー調書

梅雨が本格化したような連日の雨。だが、遅々としてすすまぬこの本の読みすすみのなか、なんとも珍妙で父と子が入れ替わり、さらには同じように年を重ねた上での物語を「ピンチランナー」が読み解いて、聞く。書く?
それでも、梅雨入りは名ばかりで好天続きだった月初に読んでいるときよりは、今のこの鬱陶しさがふさわしく、リー、リー、リー、、、という声に押され読み進む。そのリード幅は確実に延びた。だが、やはりわからない。

あれ?僕はいまどこにいるんだ?

ドッチが父でドッチが子か、その非現実な私小説。なんだコレは、こんな複雑怪奇で、読んでいるうちに自分が立っているのは、、、これを読む自分が今いるのは誰の目によるモノだろう、、、誰?という不安におそわれる。

主人公が、語り部が、誰だか分からない

そう思う読み手の自分自身が霞んでいく。しばらくぶりに本当にしばらくぶりに手に取った大江作品は、あまりにも刺激が強すぎて、いやあの頃はそういう刺激的な時代であったのだろう。
特撮以上に劇的な現実が、、、ミサイル、津波、火炎、地震、の生身がテレビには映し出されるが、自分自身を取り巻く時間の濃淡は淡いままのように感じる。そうでない、あのころの濃厚な時間の密度とは明らかに違う。
何がリアルで何がバーチャルで、いやこの身に染みわたる現象ははたしてどちらなのか、これではまっ逆さまじゃないか。

 

ピンチランナー調書 (新潮文庫)

ピンチランナー調書 (新潮文庫)